事業は「売上」ではなく「構造」で分解する

中小企業診断士

事業構造の理解

目次

2 分で読めます

売上を見ているのに、判断を誤る理由

経営の話になると、多くの企業で最初に出てくるのは売上や利益の数字です。

もちろん、数字は重要です。
ただ、実務で見ていると数字を見ているのに、判断を誤ってしまうケースが少なくありません。

原因は、売上を「結果」として見ていても、その裏にある構造を見ていないことにあります。


よくある誤解|売上が高い事業=注力すべき事業

多くの企業で、「売上が立っている事業=主力」という認識が置かれています。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

  • 利益が薄い
  • 人手がかかる
  • 将来性が見えない

こうした要素を含んでいても、売上が高い現状だけを見ると「やめにくい事業」になってしまいます。


戦略的に見るべきは「事業の構造」

戦略を考える際に重要なのは、事業をどんな構造で成り立っているかで捉えることです。

構造を見るとは、例えば次のような視点です。

  • 誰の課題を解決しているか
  • どこで価値を生んでいるか
  • どこにコストが集中しているか
  • 何が制約条件になっているか

売上は、この構造の結果として出てきます。


分解①|「顧客」で事業を見る

まず、売上を一つの塊として見るのをやめます。

  • 同じ商品でも
  • 同じサービスでも

顧客が違えば、構造はまったく異なります。

  • 手間がかかる顧客
  • 判断が早い顧客
  • 価格に敏感な顧客

これらを一緒に扱うと、戦略は必ず曖昧になります。


分解②|「価値の生まれ方」で見る

次に見るべきは、どこで価値が生まれているかです。

  • 専門性
  • スピード
  • 関係性
  • 再現性

売上が立っていても、価値の源泉が弱い事業は、環境変化に弱くなります。

逆に、売上規模が小さくても価値の生まれ方が強い事業は、集中の候補になります。


分解③|「負荷と制約」で見る

中堅・中小企業にとって、最も重要なのがこの視点です。

  • 誰の時間を使っているか
  • 属人化していないか
  • 人が増えないと回らないか

ここを見ずに判断すると、「成長しているのに苦しい」という状態に陥ります。

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、中小企業における人手不足の深刻化が主要テーマの一つとして取り上げられており、人手不足を前提とした業務プロセスの見直しと省力化投資の重要性が指摘されています。事業を「負荷と制約」の視点で分解する必要性を裏付けるデータです。 (出典:中小企業庁「2024年版 中小企業白書 概要」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/gaiyo.html )


なぜ「構造」で見ると選択がしやすくなるのか

事業を構造で分解すると、次のようなことが見えてきます。

  • 売上はあるが、消耗している事業
  • 売上は小さいが、伸ばせる事業
  • 今は主力だが、将来が厳しい事業

これらを感情ではなく、設計の問題として扱えるようになります。


戦略判断は「好き・嫌い」ではなく「設計」

事業の選択というと、どうしても感情が入りがちです。

  • 思い入れがある
  • 長くやってきた
  • 断りにくい

これ自体は悪いことではありません。
ただし、戦略判断の軸にしてしまうと、集中は起きません。

構造で分解することで、判断を設計の問題に引き戻すことができます。


まとめ

ここで一度、整理します。

  • 売上は結果であり、判断軸ではない
  • 事業は構造で分解する
  • 顧客・価値・負荷で見る
  • 集中と選択は、設計として行う

この視点がないまま「どこに集中するか」を考えても、結論は出にくくなります。


次に考えるべきこと

事業を構造で分解できたら、次に必要なのは
「では、どの構造に集中すべきか」を決めることです。

次の記事では、その判断軸として“勝ち筋が見える事業の条件”を整理していきます。

FAQ

Q1. なぜ売上を見ていても経営判断を誤ることがあるのですか?

A. 売上は事業の「結果」です。結果の数字だけを見ても、その裏にある構造(誰の課題を解決しているか、どこで価値を生んでいるか、コストがどこに集中しているか)を見なければ、正しい判断ができません。売上が高くても利益が薄い事業にリソースを集中してしまうリスクがあります。

Q2. 事業を「構造で分解する」とは具体的に何をすることですか?

A. 3つの視点で事業を分解します。①顧客で見る(手間がかかる顧客と判断が早い顧客を分ける)、②価値の生まれ方で見る(専門性・スピード・関係性・再現性のどこが価値の源泉か)、③負荷と制約で見る(誰の時間を使っているか、属人化していないか、人が増えないと回らないか)。

Q3. 売上が高い事業でも「やめるべき」場合はありますか?

A. あります。売上が高くても、利益率が低い、属人化している、将来性が見えない、経営資源を消耗している事業は、構造的に見ると「やめる候補」になり得ます。感情ではなく構造で判断することで、事業の選択を設計の問題として扱えるようになります。

Q4. 中小企業で最も見落とされやすい分解軸は何ですか?

A. 「負荷と制約」の視点です。誰の時間を使っているか、属人化していないか、人が増えないと回らない構造になっていないか。この視点を見ずに成長を目指すと、「成長しているのに苦しい」という状態に陥ります。

この主題に、私たちはどう関わるか

経営者の思いを、会社全体が同じ未来を描ける戦略へ。共に創り上げる戦略づくりが、TOMOSHIBI です。

この記事を書いた人

代表取締役 中島 賢喜

中小企業診断士(経済産業省登録 第426752号)。2019年から、中堅・中小企業の支援を続けています。

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