なぜ経営戦略は「集中と選択」から考える必要があるのか

中小企業診断士

経営戦略の定義

目次

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戦略の話をすると、なぜか話が噛み合わなくなる

「戦略を考えましょう」と言うと、多くの場面で次のような話が始まります。

  • 新しい施策のアイデア
  • 競合の動き
  • 成長市場の話

どれも間違いではありません。ただし、この段階で起きているのは戦略の話ではなく、打ち手の話です。

戦略の議論が噛み合わなくなる原因は、「戦略とは何を決めるものか」が共有されていないことにあります。


よくある誤解|戦略=うまくいきそうな施策

実務でよく見るのは、戦略を「成功確率が高そうな施策の集合」として捉えてしまうケースです。

この考え方では、できることが増えるほど、情報が増えるほど戦略はどんどん広がっていきます。

結果として、全部大事・全部やるという状態に近づいてしまいます。


経営戦略の本質は、「やらないこと」を決める行為

ここで、一度定義を整理します。

経営戦略とは、限られた資源を、どこに集中させ、どこには使わないかを決める行為です。

言い換えると、戦略とは選択と集中の設計です。

  • 人も
  • お金も
  • 時間も

無限に使える企業はありません。
特に中堅・中小企業では、この前提がより厳しく効いてきます。


なぜ「集中と選択」が重要なのか

ここで、以前のコラムで整理した前提条件を再度考えます。

  • 環境変化は元に戻らない
  • コストは下がらない前提
  • 人手不足は構造的
  • 顧客行動は不可逆
  • AI・DXは前提条件

この環境下で、「あれもこれもやる」戦略は、ほぼ確実に破綻します。

だからこそ、どこに集中するかを明確にすること自体が最重要になります。

中小企業庁「2024年版中小企業白書」では、経営方針を明確に持つ中小企業ほど、投資行動や人材確保において積極的な取り組みを行い、業績面でも良好な傾向が報告されています。戦略を言語化し集中すべき領域を明確にすること自体が、成長の起点になります。 (出典:中小企業庁「2024年版 中小企業白書」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/index.html )


集中とは「得意なことをやる」ではない

ここで、もう一つ誤解が起きやすい点があります。

集中=「自社の得意分野を伸ばす」と理解されがちです。

もちろん、それも一部は正しい。
ただし、実務では得意でも、あえてやらないという判断が必要になる場面が多くあります。

  • 利益率が低い
  • 将来性が薄い
  • 経営資源を消耗する

こうした領域を手放さない限り、本当の集中は起きません。


選択とは「正解を当てること」ではない

戦略の選択というと、「正しい答えを見つけること」だと思われがちです。

ですが実際には、戦略に絶対的な正解はありません。

重要なのは、

  • どんな前提で
  • 何を捨て
  • 何に賭けるか

を、自覚的に決めることです。

この自覚がないまま選ぶと、環境が少し変わっただけで、戦略は揺らぎます。


中堅・中小企業で起きやすい落とし穴

中堅・中小企業では、次のような理由で集中と選択が難しくなりがちです。

  • 断ると売上が減りそう
  • 人間関係を壊したくない
  • チャンスを逃したくない

これらはすべて理解できます。
ただ、その結果として戦略が曖昧なまま固定化されてしまうケースは少なくありません。


経営戦略の第一歩は「整理」

ここまでの話をまとめると、経営戦略の第一歩は新しい施策を考えることではありません。

  • 何をやっているのか
  • 何に資源を使っているのか
  • 何が判断を曖昧にしているのか

これらを整理し、集中と選択の余地を可視化することが出発点になります。


次に考えるべきこと

集中と選択が重要だと分かった次に、必ず出てくる問いがあります。

「では、どこに集中すればいいのか」

次の記事では、その判断軸として“事業をどう分解して考えるか”を整理していきます。

FAQ

Q1. 経営戦略と施策(打ち手)の違いは何ですか?

A. 施策は「成功確率が高そうな行動の集合」ですが、経営戦略は「限られた資源を、どこに集中させ、どこには使わないかを決める行為」です。戦略の本質は「選択と集中の設計」であり、やることではなく「やらないこと」を決める行為です。

Q2. なぜ中小企業にとって「集中と選択」が特に重要なのですか?

A. 人・お金・時間が限られている中堅・中小企業では、経営環境の変化(コスト上昇、人手不足、顧客行動の変化など)が元に戻らない前提で考える必要があります。この環境下で「あれもこれもやる」戦略はほぼ確実に破綻するため、どこに集中するかを明確にすること自体が最重要になります。

Q3. 「集中」と「得意なことをやる」は同じですか?

A. 違います。得意な領域でも、利益率が低い、将来性が薄い、経営資源を消耗するといった場合には、あえて手放す判断が必要です。得意でもやらないという選択がなければ、本当の集中は起きません。

Q4. 中小企業が「選択と集中」を難しく感じる理由は何ですか?

A. 主に3つあります。①断ると売上が減りそう、②人間関係を壊したくない、③チャンスを逃したくない。これらの感情は理解できますが、すべてに応え続けると資源が分散し、結果的にどの領域でも中途半端になります。

この主題に、私たちはどう関わるか

経営者の思いを、会社全体が同じ未来を描ける戦略へ。共に創り上げる戦略づくりが、TOMOSHIBI です。

この記事を書いた人

代表取締役 中島 賢喜

中小企業診断士(経済産業省登録 第426752号)。2019年から、中堅・中小企業の支援を続けています。

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