戦略の話をすると、なぜか話が噛み合わなくなる
「戦略を考えましょう」と言うと、多くの場面で次のような話が始まります。
- 新しい施策のアイデア
- 競合の動き
- 成長市場の話
どれも間違いではありません。ただし、この段階で起きているのは戦略の話ではなく、打ち手の話です。
戦略の議論が噛み合わなくなる原因は、「戦略とは何を決めるものか」が共有されていないことにあります。
よくある誤解|戦略=うまくいきそうな施策
実務でよく見るのは、戦略を「成功確率が高そうな施策の集合」として捉えてしまうケースです。
この考え方では、できることが増えるほど、情報が増えるほど戦略はどんどん広がっていきます。
結果として、全部大事・全部やるという状態に近づいてしまいます。
経営戦略の本質は、「やらないこと」を決める行為
ここで、一度定義を整理します。
経営戦略とは、限られた資源を、どこに集中させ、どこには使わないかを決める行為です。
言い換えると、戦略とは選択と集中の設計です。
- 人も
- お金も
- 時間も
無限に使える企業はありません。
特に中堅・中小企業では、この前提がより厳しく効いてきます。
なぜ「集中と選択」が重要なのか
ここで、以前のコラムで整理した前提条件を再度考えます。
- 環境変化は元に戻らない
- コストは下がらない前提
- 人手不足は構造的
- 顧客行動は不可逆
- AI・DXは前提条件
この環境下で、「あれもこれもやる」戦略は、ほぼ確実に破綻します。
だからこそ、どこに集中するかを明確にすること自体が最重要になります。
集中とは「得意なことをやる」ではない
ここで、もう一つ誤解が起きやすい点があります。
集中=「自社の得意分野を伸ばす」と理解されがちです。
もちろん、それも一部は正しい。
ただし、実務では得意でも、あえてやらないという判断が必要になる場面が多くあります。
- 利益率が低い
- 将来性が薄い
- 経営資源を消耗する
こうした領域を手放さない限り、本当の集中は起きません。
選択とは「正解を当てること」ではない
戦略の選択というと、「正しい答えを見つけること」だと思われがちです。
ですが実際には、戦略に絶対的な正解はありません。
重要なのは、
- どんな前提で
- 何を捨て
- 何に賭けるか
を、自覚的に決めることです。
この自覚がないまま選ぶと、環境が少し変わっただけで、戦略は揺らぎます。
中堅・中小企業で起きやすい落とし穴
中堅・中小企業では、次のような理由で集中と選択が難しくなりがちです。
- 断ると売上が減りそう
- 人間関係を壊したくない
- チャンスを逃したくない
これらはすべて理解できます。
ただ、その結果として戦略が曖昧なまま固定化されてしまうケースは少なくありません。
経営戦略の第一歩は「整理」
ここまでの話をまとめると、経営戦略の第一歩は新しい施策を考えることではありません。
- 何をやっているのか
- 何に資源を使っているのか
- 何が判断を曖昧にしているのか
これらを整理し、集中と選択の余地を可視化することが出発点になります。
次に考えるべきこと
集中と選択が重要だと分かった次に、必ず出てくる問いがあります。
「では、どこに集中すればいいのか」
次の記事では、その判断軸として“事業をどう分解して考えるか”を整理していきます。