原価高・人件費上昇は、いつまで続く前提で考えるべきか

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一時的だから耐えるは、まだ正しいのか

原材料費の上昇、外注費の高騰、人件費の引き上げ。
ここ数年、多くの中堅・中小企業がコスト面での圧迫を感じています。

このとき、「いずれ落ち着くだろうから、今は耐えるしかない」というように考えがちです。

ただ、この捉え方が正しいかどうかは、一度立ち止まって整理する必要があります。


よくある誤解|原価高は異常事態である

原価や人件費の上昇を、「例外的な出来事」「一時的なショック」として扱ってしまうケースは少なくありません。

確かに、短期的な変動要因も含まれています。
しかし実務で全体を見ていると、構造的に戻りにくい要素がかなりの割合を占めていることが分かります。

ここを見誤ると、判断の軸がズレていきます。


構造的に続くと考えた方がよい要因

まず、前提として置いた方がよい要因を整理します。

人件費

  • 労働人口の減少
  • 採用競争の激化
  • 最低賃金の継続的な引き上げ

これらは、短期間で元に戻る前提を置きにくい要素です。

人件費は「上がったものを下げる」ことが極めて難しいコストです。

厚生労働省の発表によれば、2024年度の最低賃金の全国加重平均額は1,055円となり、前年度比51円(約5.1%)の引き上げで、目安制度開始以降の最高額を2年連続で更新しました。政府は2020年代に全国加重平均1,500円を目指す方針を掲げており、人件費の上昇は構造的なトレンドとして継続する見通しです。 (出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42150.html

原材料・外注コスト

  • 調達先の集約
  • 物流コストの上昇
  • 為替の影響

こちらも、以前と同じ水準に自然に戻る前提で考えるのはリスクが高い状況です。


一方で、変動要素として扱えるものもある

すべてをずっと高い前提で考える必要はありません。

  • 短期的な需給バランス
  • 一時的な市況変動
  • 個別案件によるブレ

こうした要素は、調整余地のある変動要因として切り分けて扱う方が、判断しやすくなります。

重要なのは、構造要因と変動要因を混同しないことです。


元に戻る前提の危うさ

原価高・人件費上昇を「そのうち戻る」と捉え続けると、次のような判断が起きやすくなります。

  • 値上げを先送りする
  • 構造的な見直しを後回しにする
  • 利益率の低下を我慢で吸収する

これらは短期的には耐えられても、中長期では経営体力を確実に削っていきます。


経営判断に使える整理軸

原価高・人件費上昇については、次の整理軸を置くと考えやすくなります。

  • 下がる前提で考えないコスト
  • 変動として吸収するコスト
  • 構造を変えることで対応すべき領域

この整理ができると、「耐える」「削る」以外の選択肢が見えてきます。


コストの問題は、価格や戦略の問題でもある

ここで重要なのは、原価高や人件費上昇はコスト管理だけの問題ではないという視点です。

  • 価格はどうあるべきか
  • 提供価値は見合っているか
  • どこに集中すべきか

これらは、マーケティングや経営戦略の領域と密接につながっています。

環境変化をコスト削減だけで処理しようとすると、判断は必ず苦しくなります。


次に考えるべきこと

原価高・人件費上昇を「続く前提」として捉えたとき、次に考えるべきなのはどんな企業が、こうした環境下でも伸びているのかという点です。

次の記事では、景気が不安定な時代でも伸びる会社に共通する考え方を整理していきます。

FAQ

Q1. 原材料費や人件費の上昇は、いずれ落ち着きますか?

A. 構造的に戻りにくい要素が大きな割合を占めており、「そのうち戻る」と捉えるのはリスクが高い状況です。労働人口の減少、最低賃金の継続的な引き上げ、調達先の集約、物流コストの上昇、為替の影響などは、短期間で元に戻る前提を置きにくい要素です。

Q2. 人件費は下げることができるコストですか?

A. 極めて難しいコストです。一度上がった人件費は、経営判断として「下げる」選択肢を取ることが実務上困難です。人件費は「上がる前提」で利益構造を設計する必要があります。

Q3. 構造要因と変動要因はどう切り分ければよいですか?

A. 3つに分類します。①下がる前提で考えないコスト(人件費、構造的な原材料費)、②変動として吸収するコスト(短期的な需給変動、一時的な市況)、③戦略的に判断するコスト(投資判断を伴うもの)。これらを混同すると、判断がブレます。

Q4. コスト上昇を「我慢で吸収する」経営は何が問題ですか?

A. 値上げを先送りする、構造的な見直しを後回しにする、利益率の低下を我慢で吸収する、といった判断は短期的には耐えられても、中長期では経営体力を確実に削ります。構造要因については、早めに価格や収益構造そのものの見直しが必要です。

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中島 賢喜

慶應義塾大学卒。アパレル・ファッション業界で約20年のマーケティング・事業戦略の実務、ECモール運営企業とマーケティング・ECコンサルティング企業を経て、2026年に設立。複数公的機関の専門家・アドバイザーとしても活動。

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