「使えるなら使う」は、本当に正しい判断か
補助金や助成金について、「使える制度があるなら活用した方がいい」という考え方は、一般的には合理的に聞こえます。
ただし、経営の現場を見ていると、「使うこと自体」が目的化してしまう瞬間が、長期的なリスクの入口になる可能性があります。
問題は、補助金そのものではなく、補助金を前提に経営が組み立てられてしまうことです。
よくある状態①|投資の理由が「通りやすいから」になる
補助金ありきの経営で最初に起きやすいのは、投資判断の理由がすり替わることです。
- 本当に必要だからやる
ではなく、 - 補助金が出るからやる
という順番になってしまう。
この状態が続くと、投資の軸が「事業にとって意味があるか」から「制度に合っているか」へとズレていきます。
よくある状態②|計画の前提が外部要因に依存する
補助金を前提に組まれた計画は、どうしても 外部要因への依存度が高く なります。
- 採択されるかどうか
- 条件変更が起きないか
- 想定どおりのタイミングで入金されるか
これらは、経営側で完全にコントロールできるものではありません。
結果として、計画そのものが不安定になりやすくなります。
見えにくいリスク|「判断力」が鈍っていく
補助金ありきの経営で、特に見えにくいリスクがあります。
それは、経営者自身の判断力が鈍っていくことです。
- この投資は、本当に自社に必要か
- 補助がなくてもやるべきか
こうした問いを立てる前に、「制度があるかどうか」が判断の起点になってしまう。
この状態が続くと、戦略的に考える習慣そのものが弱まっていきます。
補助金が悪いのではなく、「順番」が問題
ここで誤解してほしくないのは、補助金や支援策そのものを否定しているわけではない、という点です。
問題は常に 順番 です。
- ❌ 補助金 → 投資内容 → 戦略
- ⭕ 戦略 → 投資判断 → 補助金の活用
この順番が逆転した瞬間、補助金は「助け」ではなく制約になり始めます。
長期的に起きやすい3つの歪み
補助金ありきの経営が続くと、次のような歪みが蓄積されやすくなります。
- 投資の一貫性がなくなる
- 自社の強みが育たない
- 補助が切れた後に打ち手がなくなる
これらは、短期的には見えにくいですが、数年後に効いてくるリスクとなります。
経営判断に使える整理軸
補助金を検討する際は、次の問いを自分に投げかけてみてください。
- この投資は、補助金がなくても意味があるか
- 補助が終わった後、事業はどう回るか
- これは戦略の延長か、制度対応か
この問いに答えられない場合、一度立ち止まって整理する価値があります。
補助金は「結果を早める装置」として使う
健全な使い方を一言でまとめると、補助金は「やると決めたことの結果を早める装置」として使うのが理想です。
- やる理由は、すでに決まっている
- 補助は、その実行を後押しするだけ
この位置づけであれば、補助金が経営を歪めることを防げます。
次に考えるべきこと
支援策との距離感が整理できたら、次に向き合うべきなのは、原価高や人件費上昇といった経済環境を、どの前提で考えるかです。
次の記事では、原価高・人件費上昇は、いつまで続く前提で考えるべきかを整理していきます。